コードを書く喜びを取り戻す、AI時代の「本質」の磨き方

現代の開発者が抱える3つの疲労

最近、エンジニアの間で、こんな声が増えています。

「次々に新しいAIモデルが出てきて、追いつけない」

「自分だけが取り残されている気がする」

「もう、純粋にコードを書く喜びがわからなくなってきた」

そんな空気のなかで、Lama Dev氏は動画『Can’t We Just… Write Code?』を発表しました。

数か月間、発信を止めて開発者コミュニティを観察したあと、内省をまとめて投稿したこの動画は、「混沌」と「本質」を見つめ直すきっかけになる内容です。

本記事は、その動画で展開された論点を章ごとに紹介しながら、一読者としての感想を綴っていくものです。

Lama Dev氏が見た「3つの混沌」

まずLama Dev氏は、現代の開発者が抱える疲労を、3つの構造的要因に分解します。

> (※1引用・要約) 開発者を疲弊させているのは3つの問題である。

(1)AIの混沌——AIが仕事を奪うという恐怖だけでなく、その未来や正しい使い方がわからないこと

(2)技術の激変——AIだけでなくフレームワークもクラウドサービスも更新が早く、価値を生む仕事より「追いつくこと」に時間を奪われていること

(3)SNSの圧力——一度もコードを書いたことがないような人々まで、「自称エキスパート」として現場のエンジニアにアドバイスを発信し、不要な劣等感を植えつけていること。

> ——Lama Dev “Can’t We Just… Write Code?”

AIの混沌

技術の激変

SNSの圧力

この3つの分解は、現代の開発者の不安を見事に言語化していると感じます。

特に「SNSの圧力」を3つの中に明確に入れたところに、Lama Dev氏らしさがあります。

技術や経済の話ではなく、「人間が他人と比較してしまうこと」が、不安の主成分のひとつであると見抜いている。

これは、何かを学ぶ立場の人なら、誰しも一度は味わったことがある感覚です。

  • 誰かが新しいツールを語っている
  • 別の誰かが「もう古い」と言っている
  • 自分のペースで進んでいるつもりが、いつのまにか焦りに変わっている

技術が原因のように見えて、実は人間の比較心が原因——

そう整理し直してみると、向き合うべき相手が変わってきます。

「Web開発史は、いつもこのパターンを繰り返してきた」

次にLama Dev氏は、現在の変化を歴史的視野に置き直します。

 (※2引用・要約) Web開発の歴史では、デザイナーがHTML/CSSも扱う「Webデザイナー」になり、その後JavaScriptを身につけて「フロントエンド開発者」、サーバまで扱う「フルスタック開発者」へと役割が統合されてきた。常に「基礎(ファンダメンタルズ)がある人は新しいツールを一つ足すだけで適応し、ツールだけ追ってきた人は土台から崩れる」というパターンが繰り返されている。そして、技術が効率化されるたびに、生まれた余裕は新たな期待値と要求で埋め尽くされてきた。

> ——Lama Dev “Can’t We Just… Write Code?”

この歴史的整理は、目を覚まさせるものがあります。

「自分の時代だけがいちばん変化が激しい」と感じてしまう感覚は、

たぶんどの時代の人も持っていたのです。

私たちが「AI時代」と呼んでいる現在も、

いつかは「ある時代のひとつの局面」として、歴史化されていくのでしょう。

ただ、ここでひとつ別の角度から考えると、

「効率化の余裕は期待値で埋め尽くされる」という指摘は、

業界の構造問題でもあります。

技術がいくら進歩しても、人間が楽にならない——

これは個人の努力だけで解決する話ではなく、

業界全体や経営側にも問いかけられるべき構造の問題なのかもしれません。

そう捉えると、開発者だけが頑張る話で終わらせず、

「期待値の設計を、社会としてどう持続可能にするか」という、

別の議論にもつなげていきたい問いです。

「本当の競争はAIを使うかどうかではない」というLama Dev氏の核心

動画の中核となる主張に進みます。

 (※3引用・要約) 本当の競争は「AIを使う人 対 使わない人」ではない。「ただプロンプトを打って動くことを祈っているだけの人 対 基礎を理解した上でAIを戦略的に活用する人」の間で行われる。そして勝つのは常に後者である。AIが生成したコードのステート管理やメモリ最適化が適切かどうかを判断できるのは、基礎を知る人間だけだ。

> ——Lama Dev “Can’t We Just… Write Code?”

ここがこの動画でいちばん共感を持って受け取った部分です。

特に「ステート管理・メモリ最適化」という具体的な技術用語を例に挙げているのが、リアルです。

抽象論で「基礎が大事」と言われても、ピンとこない人は多いものです。

しかし「AIが書いたコードのメモリリークに気づけるか?」と問われると、

基礎の意味が一気に立ち上がってきます。

ただ、注意したいのは、これを「基礎を学んでいない人を見下す論」として受け取らないことです。

Lama Dev氏が言いたいのは、

「ベテランは偉い」ではなく、

「これから学ぶ人も、基礎から始めれば道は開ける」というメッセージです。

近道を探すより、遠回りに見える基礎を選ぶこと。

その謙虚さこそが、AI時代に伸びていく姿勢なのかもしれません。

「振り回されないための5つのルール」

具体的な行動指針も提示されます。

 (※4引用・要約) 振り回されないためのルールが5つある。

(1)基礎(Fundamentals)を学ぶ——流行に左右されない基本原則こそが最大の適応武器になる

(2)限界を受け入れる——シニアの強みは「どこで情報を探し、どう評価し、どう応用するか」の問題解決能力

(3)安定した技術を選ぶ——最新流行よりも信頼性。Express.jsが今も週7,000万回ダウンロードされるのは「作るより維持するほうが難しい」を業界が知っているから

(4)他人と比較しない——比較対象は「6ヶ月前の自分」

(5)自分のプロジェクトを始める——ツール比較記事で時間を溶かすより、小さく作って判断する。

——Lama Dev “Can’t We Just… Write Code?”

5つとも、当たり前のようでいて、なかなか実践できないものばかりです。

特に(4)の「6ヶ月前の自分と比較する」は、シンプルで強い処方箋だと感じます。

SNSのタイムラインは、世界の上澄みだけを切り取って見せてきます。

そこに自分を並べてしまえば、誰だって自信を失います。

しかし、6ヶ月前の自分なら、嘘をつきません。

  • 読めなかったコードが、読めるようになっている
  • 前は数時間かかっていたバグが、すぐに直せるようになっている
  • あいまいだった概念が、自分の言葉で説明できるようになっている

そういう小さな前進こそが、本物の成長なのです。

そして(5)「自分のプロジェクトを始める」もまた、本質的な助言だと感じます。

ツールの良し悪しは、使ってみないと結局わからないものです。

評論家のように外から眺めて時間を溶かすより、

手を動かして、自分のプロジェクトを完成させること。

これは、技術の世界だけでなく、

あらゆる学びに通じる普遍的な原則なのかもしれません。

「つくる喜び」を、もう一度

この結びの言葉には、深く励まされるものがあります。

「コードを書く喜び」——
それは、エンジニアが入り口で感じたはずの、いちばん大切な感情です。

なのに、いつのまにかその喜びが、
焦りや劣等感、未来への不安に覆われてしまう。

その不安の正体は、技術そのものではありませんでした。

「他者との比較」「終わりのない情報の濁流」「自分が本当に求めているわけではない『最先端』への駆り立て」——
そうしたノイズが、喜びを覆い隠してきただけだったのかもしれません。

AIが代わってくれない部分があるとすれば、
それは「自分は何を作って、どんな喜びを感じたいか」という、
人間にしかない問いに、自分で答えることです。

その問いに静かに向き合うこと。

それが、AI時代に振り回されずに、エンジニアとして長く続けていくための、いちばん大切な姿勢なのかもしれません。

参考文献

Lama Dev “Can’t We Just… Write Code?”

引用原文

※1 (出典: Lama Dev “Can’t We Just… Write Code?” 原文94行目以降より)

During those months of observation, I realized that three main problems bother developers the most. The first one is, of course, the AI chaos. And this chaos is not just about the fear of AI replacing jobs, but also about the unpredictable future of AI, and not knowing exactly how we should use it in coding. The second one is the fast-changing technologies and the feeling of falling behind. … And the last one is the social media pressure. … Everyone has an opinion. Everyone is an influencer. People who have never written a single line of code are giving advice on how you should use the newest AI tools and how you should write code.

※2 (同上)

A designer would usually create the layout in Photoshop and hand it over to a developer who would turn that design into HTML and CSS. … Designers who could also write HTML and CSS became more valuable. And those people started being called web designers. This is where you start to see a pattern that repeats itself over and over in the tech industry. … So, back-end developers started learning front-end technologies, and front-end developers started learning APIs and server-side logic. And they became full-stack developers. … But as things get easier, you finish your work faster. And the hard truth is, the system never lets you spend less time on work. So you have to learn more and do more to fill that time.

※3 (同上)

But the real advantage is not in how much AI you use. The real advantage is how well you understand what the AI is doing. So now the real competition in tech is not: People who code vs people who use AI. The real competition is this: People who just prompt, and hope it works, versus people who understand the fundamentals and use AI strategically. And the second group will always be better.

※4 (同上)

So the first thing we need to do is learning the fundamentals. The second one is to accept that you can’t learn or memorize everything. We are human. We can’t know everything. … The third one is: You don’t have to use the latest technology. … That’s why incredibly stable libraries like Express.js still get 70 million weekly downloads. … Another one is: Don’t compare yourself with others. … Compare yourself to who you were 6 months ago, not Twitter feeds. … And the last one is: Start your project, instead of just consuming content.

※5 (同上)

I follow these five rules and never feel like I’m falling behind anymore. I see what happened in the past, understand that it’s a never-ending loop. I believe that if you follow them too, you’ll feel the same. … And I enjoy coding again without constantly thinking about the future.

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