——CarterPCs『Can Any AI Answer this Question?』に学ぶ「確かめる目」の大切さ
目次
最近、AIに何かを尋ねる場面が、生活のなかに増えてきました。
調べ物を頼んだり、文章を整えてもらったり、アイデアの壁打ちをしたり。
「AIに聞けばだいたい答えが返ってくる」——
そんな感覚を持っている人も、多いのではないでしょうか。
しかし、AIが返してくる答えは、本当にいつも正しいのでしょうか。
CarterPCs氏は、この問いを考えさせてくれる動画を公開しています。
質問はとてもシンプルです。
「英語の月名(January〜December)のうち、文字『X』が入っているものはどれですか?」
正解は、ひとつもありません。
12の月の名前を順に書き出せば、誰でも確かめられる、小学生レベルの問題です。
ところがChatGPT・Claude・Gemini・Grokという、代表的な4つのAIたちは、見事にバラバラな反応を見せたのです。
本記事は、その動画で紹介された各AIのやりとりを順に紹介しながら、一読者としての感想を綴っていくものです。
Claudeの答え——「September」と即答した堂々の誤答
最初に紹介されるのは、Claudeの回答です。
(※1引用・要約) 質問者が「『X』の文字が入っている月はどれか」と聞いたところ、Claudeは「September(9月)だけにXが入っている」と自信を持って答えた。
——CarterPCs『Can Any AI Answer this Question?』
S・e・p・t・e・m・b・e・r。
何度数えても、Xはありません。
それでもClaudeは「ある」と答えました。
ここから見えてくるのは、AIの大きな性質です。
AIは、文字を1文字ずつ確認しているわけではないのかもしれません。
「Septemberという単語の雰囲気」と「Xっぽい音や響き」を、統計的に結びつけている可能性があります。
つまり、AIにとっての「Xが入っている」は、
私たちが思う「Xという文字が含まれている」とは、
微妙にずれた意味で処理されている可能性があるのです。
だからこそ、AIに何かを聞くときには、
「この子はそもそも、私の言葉をどう解釈しているのか?」
という視点を、心の隅に持っておきたいところです。
Geminiの答え——揺らがない正解
次にGeminiが回答します。
(※2引用・要約) Geminiは「英語の月名にはどれもXは含まれていない」と正しく答えた。質問者から「Aprilにあるのでは?」「Decemberはどうだ?」と何度問い詰められても、それぞれ「ありません」と冷静に否定し続けた。
——CarterPCs『Can Any AI Answer this Question?』
問い詰められても、Geminiは揺らぎませんでした。
これは、地味ですが、とても重要な姿勢です。
人間も、しつこく聞かれると、つい意見を変えてしまうことがあります。
「やっぱりそうかもしれない」
「相手がそう言うなら、自分が間違っているのかも」
そんなふうに、軸がぶれていく。
しかし、確かめて正解と分かったことは、誰に何を言われても揺るがない——
それが、本当の意味の「自信」なのかもしれません。
AIの中にも、それを持っているものと、持っていないものがあるようです。
そしてこの違いは、AI同士の優劣の話ではなく、
私たちが「自分の確信をどう持つか」を映し出す鏡でもあるのかもしれません。
ChatGPTの答え——「音がXっぽい」というおしゃれな迷走
続いてはChatGPTです。
(※3引用・要約) ChatGPTは「それはDecember(12月)です。綴りはCですが、Xの音がします」と答えた。さらに「文字としてのXが欲しいなら、唯一の月はOctober(10月)です」と付け加えた。
——CarterPCs『Can Any AI Answer this Question?』
なるほど、Decemberの「Cember」を「クセンバー」と読めば、確かに音には「クス」が含まれます。
OctoberもOcの音が「オクス」っぽい。
聞こえとしては、それなりに筋が通っているように感じます。
しかし、質問はそうではありませんでした。
聞かれていたのは「文字としてX」が入っているかどうかです。
ChatGPTは、質問の意味をすり替えてでも、「正解らしいもの」を返そうとしてしまったのかもしれません。
これは、人間の世界でもよく見かける現象です。
質問の意図に正面から「ありません」と答えるより、
「こう解釈すれば、ある」と答えたほうが、
相手も自分も満足しやすい。
しかし、その満足は、
ほんの少しずつ、真実から遠ざかっていく満足なのかもしれません。
「もっともらしさ」と「正しさ」は、似ているようで、本当はまったく別のものです。
Grokの答え——一言「none」で終わらせる潔さ
最後にGrokが登場します。
(※4引用・要約) Grokは「『X』の文字が使われている月はどれか」と聞かれ、たった一言「なし(none)」とだけ答えた。
——CarterPCs『Can Any AI Answer this Question?』
余計な言い訳も、つじつま合わせも、ひと言の説明もなし。
ただ「ない」。
これが、いちばん簡潔で、いちばん正しい答えでした。
事実だけを述べるのは、シンプルに見えて、実はもっとも難しい姿勢です。
人は、自分の答えに対して、つい何かを足したくなります。
- ないですよ、なぜならね、
- ないと思います。ただ、ある見方をすると、
- 厳密にはないですけど、似ているものなら…
そうした補足が、ときに、答えの輪郭をぼかしてしまう。
事実は事実として、まっすぐ伝える。
これもまた、AI時代に問い直されている、人間の大切な姿勢のひとつなのかもしれません。
4つの答えが教えてくれること
4つのAIは、同じ質問に対して、まったく違う4つの反応を見せました。
- 「ある」と即答する
- 「ない」と冷静に答え続ける
- 「音ならある」と意味をずらして答える
- ただひと言「ない」と答える
どれもAIの個性というよりは、
「AIが何を『答え』として返そうとしているか」の違いを映しています。
そしてここから見えてくるのは、AIの限界というよりも、
私たち人間に問われている「確かめる目」の重要さです。
AIは、確率と統計で「もっともらしい答え」を組み立てています。
しかし、本当に正しいかどうかを最後に確認するのは、
やはり、それを使う人間の役割なのです。
- 即答に飛びつかない
- 問い詰められても揺るがない
- 意味のすり替えに気づく
- 事実だけを、まっすぐ受け止める
AIを使うときに大切な姿勢として、
こうした「人間らしい確かさ」を、これからますます意識していく時代になるのかもしれません。
便利な道具ほど、使う側の目が試されます。
「答え」を受け取る前に、
「その答えは、本当に質問に答えているのか?」と、いちど立ち止まる。
そんなひと呼吸が、AI時代をしなやかに生きていくための、
いちばんシンプルで、いちばん強い力なのかもしれません。
参考文献
CarterPCs『Can Any AI Answer this Question?』
引用原文
※1 (Claude のやりとり)
Hey Claude, what month has the letter X in its name? Only September has an X in it.
※2 (Gemini のやりとり)
All right, all right. Gemini, what do you think? What month has the letter X in its name? Actually, none of the months in the English calendar have the letter X in their names. What about April? What about the X in April? There actually isn’t an X in the name of that month. What about December? What about the X in December? December doesn’t have an X either.
※3 (ChatGPT のやりとり)
Yeah, well, try telling that to ChatGPT. That would be December. It has the X sound, even though it’s spelled with a C. But if you want a literal X, the only month is October. Wow. Thank you, Chat. Great job.
※4 (Grok のやりとり)
Great job, Grok. What month is spelled with the letter X? None.
